泡盛Q&A

泡盛に使用するお米はどんなお米ですか?

泡盛はタイ国から輸入したインド種の米で造られています。

1420年から始まったシャム(現在のタイ国)との交易で泡盛の製法が沖縄へ伝えられたといわれますが、その製法を守り、米の輸入が制限されている現在でもタイ国からインド種の米を輸入し泡盛を造り続けています。なお、われわれが食べている日本種の米の形は丸く軟質なのに対して、インド種の米は細長く硬質で、麹がつくりやすく、また泡盛に独特の風味を醸し出してくれるのです。

泡盛造りの工程を簡単に教えてください。

泡盛は次の流れで作られています。

1.原材料、洗米:原料のタイ米を洗米し、浸漬します。浸漬後は水分を十分に切って蒸します。

2.麹(こうじ):蒸した米を山盛(マジン)して40℃内外の適温を保ち、これに泡盛黒麹菌を散布して製麹にかかります。麹は40~50時間で熟成します。

3.モロミ:熟成させた麹を仕込み容器に入れ、水、酵母を加えて醗酵させます。

4.蒸留:醗酵が終る頃モロミは熟成しますので、蒸留機に移して加熱して蒸留します。

5.貯蔵:蒸留された液体が「泡盛」です。タンクやカメに移して貯蔵されます。

6.瓶詰:貯蔵された泡盛を瓶詰めし、皆様のお手元にお届けいたします。

泡盛造りに使用する麹菌とはどういう菌ですか?

カビの生えやすい東アジアの国々ではカビを利用した醸造法が発達してきました。わが国の清酒、味噌、醤油などでは原料に含まれる澱粉や蛋白質を解消するのに黄麹菌という黄緑色の胞子(種子)をつけるカビが使われています。

このカビは酸をあまりつくらないので、雑菌が生えにくい冬の寒冷期の醸造には適していますが、沖縄のように冬でも暖かいところには適しません。500年の泡盛の歴史のなかで、気温の高い夏でも安全に泡盛ができるだけの酸をつくる麹菌が育成されました。それが泡盛麹菌です。

この菌の胞子の色は黒く、黒麹菌の仲間に入られていますが、酸をよくつくるだけでなく、澱粉の消化力も強く、風味も優れ、しかも保健上安全であるところが泡盛麹菌の特徴です。この特質が明治の学者によって認められ、明治末年から大正にかけこれまで黄麹菌を使っていた南九州の本格焼酎造りに泡盛麹菌が使われはじめ、現在では泡盛麹菌の変わり種である白麹菌によってほとんどすべての本格焼酎が造られています。すなわち泡盛麹菌は日本の本格焼酎用麹菌の元祖ということができます。

モロミとは何ですか?

泡盛の醪(モロミ)は米麹、水、酵母を混ぜたものです。

澱粉質原料あるいは蛋白質原料(醤油の場合)、麹、水などの醸造原料と醸造微生物を容器に入れて混ぜ合わせた物を醪(モロミ)といいます。酒類製造では醪、醤油醸造では藷味と書きます。

米から泡盛になるまで何日くらいかかるのですか?

最低3か月以上です。 ※メーカーによって差があります。

米こうじをつくるのに40時間 (3日間)、モロミをつくるのに13日、蒸留に2~3時間、この時点で摘出されたものはすでに泡盛となっていますが、味の安定をはかる為の熟成期間として最低3か月以上です。(メーカーによって差があります)

寝かせて味の安定を図りますので、米から泡盛製品になるまで最低3か月半はかかります、もちろん古酒として出荷するには、更に3年以上貯蔵しなければなりません。

泡盛原酒のアルコール分は通常何度ですか?

泡盛原酒のアルコール分は通常45度前後です。

泡盛の原酒は、初留(蒸留はじめ頃)の65度前後から後留(蒸留おわり頃)の12度前後をあわせ、平均すると45度前後の度数で摘出されます。

この原酒を割水によって、度数調整がされそれぞれの商品となっていきます。
ちなみに初留には、旨味成分が多く、後留にはにがみを感じる成分が多くなってくると言われています。

アルコール度数はどうやって計るのですか?

アルコール度数はいろんな計り方があります。

アルコール分の測定法にはいろいろあります。ここでは酒について国税庁が定めた方法について説明しましょう。

まず酒100mlを正確に採取し、蒸留して約70mlの蒸留液をとり、これに蒸留水を加えて正確に100mlにします。この操作は酒に含まれる糖類やアミノ酸などの成分を除き、微量の香気成分だけを含むアルコール水溶液とするために行います。したがってすでに蒸留済みの泡盛では、この操作は要りません。

この蒸留液を清浄なガラスのシリンダーに入れ、温度を15℃に調節し、これに酒精度浮ひょうを浮かせ、液面と釣り合ったところの浮ひょうの示度から酒のアルコール度数を読み取ります。酒税法でいうアルコ―ル分とは温度15℃のとき原容量100ml中に含まれるエチルアルコ―ルの容(ml)をいい、これを度数として示します。

泡盛の熟成とはどういうことですか?

泡盛原酒を貯蔵し、年月の経過と共に香味、風味が良くなる変化を熟成といます。

熟成は泡盛の醍醐味、美味しさの秘訣です。蒸留で、出来たばかりの泡盛原酒を貯蔵し、年月の経過とともに香味、風味が良くなる変化します。
その原因として

泡盛が空気を吸いながら香味成分を変化させ、刺激的な香味がなくなり、芳香を増す

アルコールと水が組み合わさって味が丸くなる

カメ貯蔵の場合はカメの壁面からの蒸発で香気成分が濃縮される

タル貯蔵の場合にはタル材成分(香気成分、色素など)が溶出し、コハクの色やバニリン香がつくなどが挙げられます。

常圧蒸留泡盛は、減圧蒸留のものより熟成効果が大きく、またタル貯蔵による変化は、ウイスキー、ブランデーなどの熟成と良く似ていて、香味風味で重要な部分を占めます。

タル貯蔵の泡盛の風味がウイスキーなどに近くなるのはそのためです。熟成の度合いは、貯蔵の時間と比例しますので長期間にわたって貯蔵された泡盛は、香り、味わい、共にまろやかになり美味しい泡盛になります。

熟成の度合いは、ラベルに表示された古酒(三年以上貯蔵した泡盛)の年数が目安になりますが、古酒の味として完成していくのが五年~十年位でピークを迎え、それ以後はゆるやかな変化になるといわれています。

泡盛の古酒とはどういう酒ですか?

古酒表示には規定があります。

『泡盛の表示に関する公正競争規約』のなかで、古酒を次のように定義しています。

「(その泡盛の)全量を3年以上貯蔵したもの又は仕次ぎしたもので、3年以上貯蔵した泡盛が、仕次ぎの後泡盛の総量の50パーセントを超えるものでなければ古酒と表示してはならない。古酒の表示に代えてクース、又は貯蔵酒もしくは熟成酒と表示することができる。貯蔵年数を表示する場合は、年数未満は切り捨てるものとする」

ここで《仕次ぎ》とあるのは、泡盛古酒の伝統的なつくり方でカメの壁面からの蒸散で減った分(カメ貯蔵場合)や飲んで使った分を、次に古い泡盛で補充する貯蔵法のことです。すなわち、最も古いものから一番古酒、二番古酒、三番古酒とすると、一番から呑んで減った分を二番から補充し、二番へは三番から補充するというやり方です。

これが一般的な仕次ぎ法ですが、東恩納寛惇著「古酒の話」のように、飲む前に、一番から汲み出す量に相当する泡盛を予め三番から二番に、二番から一番に入れておくという仕次ぎ方法もあるようです。

古くから保存されていた古酒は戦争でほとんど失われてしまいましたが、幸い戦災をまぬがれた南蛮ガメ貯蔵の泡盛でもっとも古いものに百年を超えるものも現存し、いまなお芳香と奥床しい味を持ち続けています。

瓶詰めとカメ詰めの香味の違いは?

泡盛が空気を吸うことによって起こる香味成分の変化です。

熟成中の変化のうち、アルコールと水が組合わさって味が丸くなることは瓶もカメも同じです。瓶とカメの一番の違いは、泡盛が空気を吸うことによって起こる香味成分の変化です。

カメ貯蔵の泡盛は、カメの壁面からは揮発成分の蒸散による香気成分の濃縮がおこなわれ、アルコール分が瓶貯蔵より低くなり、落ちついた香りが高まります。さらに陶土の無機成分の溶出による着色、味の変化も加わります。

その結果、カメ貯蔵の泡盛の香味は瓶貯蔵のものより濃醇で、味のあるものとなります。
瓶貯蔵の泡盛は軽快な香りがあり味は淡麗で、かつアルコールがなれた丸さがあります。

カメ詰めの場合、良いカメの条件を教えてください?

カメ詰めの場合、良いカメの条件を下記にあげてみました。

上薬をかけない荒焼(あらやち)のカメであること。
※泡盛が呼吸できるからです。

カメの陶土の無機成分が泡盛の着色、味に影響するので、シャム南蛮が最高といわれています。
※シャム南蛮では3年で淡黄色に着色するが、沖縄の地ガメでは6年かかるからです。

注意事項
新しい荒焼のカメの場合、水を入れたときは漏れなくても、泡盛を入れたとき漏れることがあるので、貯蔵初期には漏れに注意しなければなりません。

中古のカメの場合、前に入れてあった酒のクセが滲み込んでいて、泡盛に移ることがあるので要注意。なお、梯梧(でいーご)の幹を輪切りにした栓を蒲葵(びろう、くば)の葉でくるむか、ラップでくるむかにより、風味が違ってきます。

長期貯蔵中に品質が低下することはないですか?

長期貯蔵中に品質が低下することはあります。

長期貯蔵中にも手入れが必要です。

蒸留したままの泡盛原酒には米由来の油分が含まれています。この油分は泡盛の白色浮遊物やにごりの原因となるので、瓶詰めするまえに除去しています。しかし、味の成分として少し残す必要もあります。油分を取りすぎると味があらくなります。

この油分が、貯蔵中に泡盛の上に浮かんでくると、空気によって酸化し、壜(びん)付け油の臭いのような油臭が泡盛につきます。油臭さは快いものではないので、貯蔵中、酒の表面に浮かんでくる油はすくい取った方がよいでしょう。

琉球王家の松山尚順氏の遺稿『鷲泉随筆』によれば「古くから鹿児島より沖縄へわたってきた髪付油」の匂いを《白梅香(かさ)》といって優良の古酒の香りの一つとしていた時代もあります。

容器の蓋のカビにも注意しています。カビがはえるとカビ臭のもととなります。

カメによっては陶土からの溶出成分が多いものがあり、その場合はカメ臭と呼ばれる香りが強くなりすぎて土臭さとして感じられるので、別の容器に移した方が良いでしょう。

製品に表示されている『本場泡盛』とはどういう意味ですか?

『本場泡盛』表示は Made In Okinawa の印です。

泡盛に関する公正競争規約により、沖縄県以外でも定義にしたがって泡盛を製造することができます。

しかし、泡盛は琉球王国時代から沖縄でつくられ、しかも定義で使用を規定されている黒麹菌は明治の末、沖縄から鹿児島へ伝えられたという事実からも、泡盛は沖縄県のオリジナル商品であるといえます。

その意味を含め、沖縄産と他の地方産を区別するための表示が、ラベルに記載されている『本場泡盛』の表示で、その製品が沖縄県でつくられた泡盛であることを示しています。

焼酎の甲類と乙類とはどう違うのですか?

酒税法により、焼酎は蒸留機の種類により甲類と乙類に分けられています。

甲類とは連続式蒸留機、乙類は単式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分は甲類では36度未満、乙類では45度以下ときめられ、そのアルコール度数を超えるものは、スピリッツ類か原料用アルコールという別の酒に分類されます。

単式蒸留機については、原材料の素材の香りをあますところなく引き出すのに対し、連続式蒸留機はほとんど純粋に近いアルコールを製造するため考案された装置で、原理的には単式蒸留機を何十、何百と積み重ねたものといえるでしょう。

単式蒸留機で蒸留した泡盛原酒のアルコール分は43度前後ですが、これをもう一度繰り返し蒸留すればアルコール分を80度位まで高めることができます。さらに蒸留を繰り返して行けば最終的にはアルコール分96度位のアルコールがえられます。この繰り返し蒸留を連続的に行う装置が連続式蒸留機です。これでえられた純度の高いアルコールを水で割ったものが焼酎甲類です。 昭和46年の法改正で、甲類をホワイトリカー、乙類を本格焼酎またはホワイトリカー、と表示してもよいことになりましたが、乙類はもっぱら本格焼酎と表示されているので、ホワイトリカーといえば焼酎甲類のことといえるでしょう。

甲類はややアルコールの匂いを感じさせるソフト型、本格焼酎は原料の風味を特徴とするややハード型、減圧蒸留の本格焼酎はその中間型になっています。

泡盛はアルカリ性、それとも酸性?

アルカリ性です。

泡盛を含め、蒸留したばかりの原酒は中性ですが、蒸留酒は割水されて製品となるため、その水の無機物が反応に影響します。

泡盛の場合、沖縄の水がカルシウム、マグネシウムが多いのでアルカリ性を示すようになります。

長期熟成した泡盛はなぜ旨い!?

ガス臭と呼ばれる燻しくさい臭いが消えていきます。

蒸留したばかりの泡盛原酒を容器に寝かしておくと、まずガス臭と呼ばれる燻しくさい臭いが消えていきます。それから、泡盛が空気を吸いながら香気成分を変化させて、刺激的な香りがなくなり、芳香成分が増します。

また、アルコールと水が組み合わさって味が丸くなり、さらにカメ貯蔵の場合はカメの壁面からの蒸散で香気成分が濃縮、樽貯蔵の場合には、タル材成(香気成分色素)などが溶出し、コハク色やバニリン香を醸しだすなどの変化が起こりその味わいを深めていきます。

泡盛もウィスキーやブランデーと同じ特長をもっているのです。

黒麹菌を使った酒は世界で泡盛だけって本当?

本当です。

気温が高い夏でも安全に泡盛ができるのは、雑菌からモロミを守ってくれる黒麹菌がよく酸をつくりだすためです。さらに澱粉の消化力も強く、風味も優れ、しかも、保全上安全であるという特長が泡盛の味わいをつくりだしています。

また、世界広しといえども黒麹菌をつかった酒は泡盛だけなのです。

泡盛の中に血液サラサラになる成分が入っているって本当?

本当です。

人間の血液の中には血液を固まらせる因子と溶かす因子があります。血液が固まると心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症の恐れもあります。

泡盛には血液を溶かす因子プラスミン(線容酵素)の量を増やす作用があることが最近わかってきました。泡盛を適当量飲むことにより血液がサラサラになり血栓症の予防になるといわれています。

泡盛の歴史を教えて下さい。

日本の焼酎のルーツといわれる蒸留酒、泡盛。その蒸留酒の起源は紀元前300年頃の古代ギリシャまでさかのぼることができ、蒸留の記録としては、哲学者として名高いアリストテレスによるものが残されています。

アンビクスと呼ばれた蒸留機はアラブ人によって、アランビックという名でヨーロッパやアジアに伝えられ、13~14世紀頃には、中国や朝鮮、東南アジアでも穀物や椰子の樹液、糖蜜などによる蒸留酒がつくられるようになっていました。

15世紀初頭、中国や東南アジアと貿易品と共に、シャムより蒸留酒を輸入。やがてその蒸留法を習い、国産の蒸留酒をつくりだしていました。それが泡盛です。

淘汰を重ね、磨き抜いた泡盛は、貿易の品として珍重され、色鮮やかな進貢船に揺られ、中国や日本に運ばれて唯一無二の酒として喜ばれました。

時は流れて現在、県下48ケ所の泡盛製造メーカーが、さまざまなタイプの泡盛を造り出しています。

近年は、味わいをマイルドにし、飲みや易くしたことで、若者や女性に受け入れられ、一大ブームとなるなど注目の高いお酒となりました。また、一方では、じっくり熟成を重ねた古酒も人気が高く 仕込みだけでなく、樽仕込みの泡盛ができたりと時代と共に多様化しています。

それは、沖縄の人々の柔軟な姿勢と伝統を守る姿勢とが泡盛づくりにも反映されたもので、これからも沖縄の銘酒泡盛は、時流に添った研究開発を続けながら古き良き味わいを守り続けています。